「ただいまー。ジロー!おるんやろ?ケーキ買うてきたでー」
「ケーキ!?なになに!どーしたの!?忍足がケーキなんて珍しい!」
「たまにはええやろ」
「あ、コージーだ。いま安いんだよね!なんだ忍足、また行列できてたから並んじゃったんでしょ。いい加減その習性どうにかしたほうがいいよ」
「うっさい!おっきなお世話や。何でもええから、食べ。ほら」
「わーーい!……あれ?」
「なんやねん」
「いや。あれ……?」
「だから、なんや!」
「……忍足、具合でも悪いの?え?だってこれ、スペシャルショートだよ!?なに!どーしたの!?」
「どうしたて」
「だって忍足が安くて並んでる行列で割引されてないもの買ってくるなんて!!絶対おかしい!何か変な物でも食べたの?」
「おまえ俺をなんだと思ってるんや……。変なもん食べたとか、ジローにただけは言われたないわ」
「えー!だって……」
「やめ!熱もない!!」
「だっておかしいじゃんか!」
「おかしないわ!せっかく誕生日やから、奮発してやったんやないの。まったく……」
「たんじょうび?」
「そうや」
「……だれの?」
「……5月生まれは、ジローしかおらんやろ。」
「俺の??たんじょうび?……明日だよ?」
「おまえ、いつまで休む気やねん。今日で連休は仕舞いや。明日から学校やで。つまり、今日が5月5日で、子供の日で、ジローの誕生日や」
「ぇえーーー!!マジマジ!?明日から学校!?」
「そこかいな」
「そっか!今日、俺誕生日か!」
「せやで」
「なんだよ、半日終わっちゃったじゃん!もったいない!ちえー!なんでもっと早く教えてくんないの!」
「それは、俺の落ち度やないと思うで」
「忍足が悪い!だから、俺のお願いきいて?」
「なんやねん、その理屈」
「なんでもいいから!えーとね、はい、ここ座って。よいしょ」
「……こんなんでええの?」
「え?なに。もっと、凄いこと期待してた?」
「凄いことってなんや」
「痛っ!」
「こんなん、いつもしてるやん。お願いとか言うて。案外謙虚やんな」
「けんきょ?謙虚かなあ?だいたい謙虚ってなに?」
「ひかえめとか、つつましいとかいう意味やろ」
「ふうん」
「今日は特別な日やし、ジローのことやから、もっと素っ頓狂なこと言い出すと思ったわ」
「じゃあ、いつもが特別なんだ」
「は?」
「違うな。いつも特別なら、それは特別じゃないもんね」
「……」
「忍足には、俺が特別なんだ!うん。そうだよ、そうに違いない」
「………」
「忍足、覚えててくれてありがとう。ケーキも。ありがとう」
「……どういたしまして。おめでとうな」
「忍足、ケーキ!食べさせて!」
「調子にのるんやない!寝っ転がったまま食べたらあかん。ちゃんと起きて自分で食べ」
「ちえー。誕生日なのに!」
「はいはい。お茶入れるから、ちょっとどき」
「ぶーー。じゃ、おめでとうのチュウ」
「はいはい。おめでとさん。チュ。ほらどき」
「忍足って、嫌なとこ淡泊だよね。かわいくない」
「かわいなくて結構。あとでまたしたるから、どき」
「……。でも好き」
「はいはい。俺もやで」
「忍足は、ケーキも食べさせてくれるよ」
「……おまえ、呪詛みたいに言うなや」
「言霊って言ってよ。食べさせてくれるもん」
「はいはい。俺の負けや」


Endless Sweet






HAPPY BIRTHDAY!! dear 芥川慈郎
2004-05-05