「白石ぃ!なんや食うてる!デカいみかん?」
昼休み、既に自分のクラスと同じくらいに馴染んだ教室に、金太郎が顔を出した。
「食後のデザートのオレンジや。金ちゃんも食う?甘いで」
「んあ」
金太郎は返事よりも先に、パカリと口を開けて待つ。
「せや、金ちゃん今日何の日か知っとる?」
「へう?」
口を開けたまま顔を動かして、金太郎が黒板を見た。
「じゅうよんにち。あ、ケンヤ日直や」
黒板に書いてある日付を確認すると、その下に知っている名前を見つけた。
「ちょうどいま日直の仕事こなしてんで」
謙也が教室に居ない理由を説明しながら、白石はオレンジの一房をもぐ。
「今日はな、オレンジデーていうんやて」
金太郎はお預けをくったままの、白石の手元にあるデカいみかんをじっと見た。
「オレンジ?」
白石は、左手で直に触らないように、片側を器用に外皮で押さえながら右手だけでオレンジの薄皮を剥いていく。
「オレンジデーにオレンジもろたら、お礼にほっぺにチューせなアカンのや」
白石の繊細な指の動きに合わせて視線を動かす金太郎は上の空で、涼しい顔のでたらめを聞く。
「金ちゃんできるか?」
完璧に剥かれたオレンジが金太郎の口元に差し出された。
一瞬の迷いもなく、金太郎は、オレンジに食いつく。
「ほんまや、甘い!うまいー」
オレンジを味わった金太郎の顔が幸せそうに綻ぶ。
「おおきに!白石」
ぐわっと白石の視界いっぱいに金太郎の笑顔が近づいた。
「んぐ!」
不意打ちに口を塞がれ、白石が目を見開く。
「き、金ちゃん、なに……!?」
「お礼のチューやろ?」
ケロリと答えたゴンタクレが唇の端を舐める。翻った赤い舌を白石は呆然と眺めた。

「……ほっぺて、言うたやろ」

(まあええか……誕生日おめでとう、俺)








2010-04-14
HAPPY BIRTHDAY!! dear 白石蔵ノ介




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ありったけの絶頂をこめて