※どんさんが『』の中身だけを送り付けてきて話にするがいい、と無茶振りしてきました





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『近藤さん!これ読んでくだせぇ』
寝間着に着替えた沖田が綺麗に敷かれた布団の真ん中に、どすんと分厚い本を差し出した。
「ん?」
そろそろ寝ようと思っていた矢先、寝具を横取りされた近藤がパチリと瞬く。
『買ったはいいんですが、自分で読むのはタリーんで』
ニコっと微笑まれて、つい釣られて近藤もへらっと笑ってしまった。もうそのあとは沖田の独壇場。

はい、ここに座ってー
正座じゃ痺れちまうんで、胡座のがいいですぜ
近藤さん案外軟らけえから大丈夫大丈夫

何が大丈夫なのか分からないうちに、沖田に言われるまま胡座をかいた近藤の片脚を沖田が確かめるように、ぽんぽんと軽くはたく。

「よいこっせー」
沖田は軽快な掛け声で、狙いを定めた場所めがけて遠慮なくごろりと横になった。
「よし、準備できやした!どーぞ」
「ええー」
片脚に沖田の頭を乗せ、さすがの近藤も得心がいかない。けれど、

「こんどーさん」

キラキラとした期待の籠った目で見上げられたら、近藤に否と言う術はなかった。昔からそうだ。
「わかった、わかった」
沖田の持って来た本を空いてる脚に乗せて開く近藤を沖田は嬉しそうに見る。
今日は愛用のアイマスクは持ってきていない。
寝るつもりなどなかった。この脚の上で眠ってしまうなんて勿体ない。沖田は、必要以上に目を見開いて、至近距離で近藤を見つめる。
買った本は内容も見ずに適当に選んだ。何でも良かった、ただし、できるだけ長い話がいい。
厚さで選んだその本は、どうやら異国の説話集のようだった。

沖田は寝るつもりなど、なかった。

ただひとつの誤算は、少し不思議な物語を滔々と読む近藤の声が、心地好過ぎたこと。


30分と経たずに聞こえてきた穏やかな寝息に、近藤は苦笑をもらす。
相変わらず沖田の寝顔は天使のようで、無意識に手が髪を梳いた。
『これじゃあ いつ終るか分からねえな』
やたらと分厚い本の重みをずしりと脚に感じる。
「まあいいか。今日はここまで、続きはまた明日」
近藤は、物語の決まり文句と同時に、膝の上の本を閉じた。




※『』= どんから出された課題(話の流れ)