「逆に追いつめられてる」という先輩の言葉をどこか遠くで聞いていた。

いま土壇場で二本決めたネオスカッドサーブを極めるために、あいつがどれだけの練習をしてきたか俺は知っている。
癖というのは、意識して抜くことが難しいから、癖と言うのだ。
それをこの短期間であいつは克服してみせた。

この試合の勝敗の重要性は誰もが理解しているだろう。
けれど、いま戦っている彼らの気持ちを理解できるのは、俺しかいない。
試合中は、それこそ必死でボールにくらいつき、ただポイントを重ねていく結果としての勝敗しか意識していない。
それでも、負けられない、という想いだけは強くある。
いろいろなものが押し寄せてくるのは、終わったあとだ。

瞬きをする間も惜しんで、コートを凝視する。
いま俺にできることなどもう何もない。
あとワンポイント、それがどれだけ重いものなのか、俺はよく知っている。


勝てよ、鳳。

俺は、お前の気持ちなんてわかりたくない。






2005-12-05
HAPPY BIRTHDAY!! dear 日吉若










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このあいだとても可愛らしいトリヒヨを読ませてもらった影響で
きもちトリヒヨで…(言うのはタダ)